研究概要 |
液体急冷法により作製した非晶質Ni-Zr合金薄帯を酸化還元処理することにより新規準安定正方晶ジルコニア担持ニッケル触媒が得られ,二酸化炭素の接触水素化反応に高活性を示すことがわかっている.そこで,急速凝固Ni-Zr合金粉末をガスアトマイズ法により作製し,酸化還元処理を施すことで正方晶ジルコニア担持ニッケル触媒の作製を試みた. 触媒活性向上に酸化物担体として大きく寄与する準安定正方晶ジルコニアは合金の酸化処理過程で生成し,その後の還元処理過程ではその構造を変えることはない.そこで急速凝固Ni-Zr合金粉末の酸化過程を詳細に調査した.Ni-Zr二元系合金は,ジルコニウム含有量が多いほどその酸化時の重量増加率は大きくなった.生成酸化物は,Ni-40at%Zr合金粉末は773K,5時間の大気酸化処理後もNi_<10>Zr_7の金属間化合物を有しジルコニアの生成が認められなかった.Ni-70Zr合金粉末は酸化処理後において単斜晶ジルコニアが生成し,触媒担体として有効な正方晶ジルコニアを得ることはできなかった.そこで,正方晶ジルコニアを安定化させる効果をもつ希土類元素を添加し,酸化速度の向上および正方晶ジルコニアの安定化を図った.Ni-30Zr-10Sm合金粉末に酸化処理を施した粉末には,正方晶ジルコニアが優先的に生成し,その後水素還元処理を施し正方晶ジルコニア担持ニッケル触媒として二酸化炭素のメタン化反応に供したところ,二酸化炭素の転換率は523Kにおいて90%に達した.以上の結果から,Ni-Zr二元系急速凝固ガスアトマイズ粉末は,非晶質Ni-Zr合金薄帯と異なり,金属間化合物により構成されているため,酸化処理によって正方晶ジルコニアを生成しないが,Ni-Zr-Sm三元系急速凝固粉末を用いることにより,酸化処理時に触媒活性向上に有効な正方晶ジルコニアを生成すること.がわかった.さらに,水素還元処理によりサマリウム内包正方晶ジルコニア担持ニッケル触媒が得られ、二酸化炭素素の接触水素化反応に極めて高活性を示すことが明らかとなった.
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