超伝導相分散金属ガラスは、アモルファス中に超伝導相が分散した金属ガラスである。また、金属ガラスの特徴は、結晶化温度の前に過冷却液体状態領域が存在することである。金属ガラスの過冷却液体状態領域の超粘性流動を利用することで、金属ガラスは比較的容易に線材化加工が可能である。高易加工性を有するZr基超伝導相分散バルク金属ガラスは線材化応用の観点から魅力的な材料である。特に、金属ガラスの線材化プロセスでは、アモルファス単相の金属ガラスを過冷却液体状態領域で熱処理することで、超伝導相を金属ガラス中に導入し、そして同時に超粘性流動を利用した延性処理ができれば、超伝導性金属ガラス線材の生産性の面では、非常に生産効率を上げることになる。本研究では、Zr-Al-Cu-Ni系バルク金属ガラスの過冷却液体状態領域での延性特性を調べることした。実験では、Zr_<55>Cu_<30>Al_<10>Ni_5金属ガラスを過冷却液体状態領域で、一定荷重のもとで引っ張ることで伸び率を測定した。この過冷却液体状態領域での金属ガラスの一連のプロセスにより、Zr_<55>Cu_<30>Al_<10>Ni_5金属ガラスは約2.7Kでゼロ抵抗になり、超伝導特性を示した。また、Zr_<55>Cu_<30>Al_<10>Ni_5金属ガラスは最大で約1.5倍の伸びを示した。 今年度の研究により、金属ガラスの過冷却液体状態領域での超粘性流動を利用した超伝導線材化は有効な手段であることが示された。
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