研究概要 |
本年度(平成16年度)では、Ti-Nb-Sn合金多孔質焼結体の組織と機械的特性に及ぼす熱処理の影響を調査した。以下に具体的な実験項目を記し、その結果について報告する。 (1)Ti-Nb-Sn合金多孔質焼結体の組織 プラズマ回転電極法(PREP)によって作製したTi-Nb-Sn合金粉末を1223K,7.2ks,負荷応力1,3,5MPaの条件にてカーボンモールド中で焼結したところ、この負荷応力の範囲においては、応力の増加に伴い気孔率がほぼ直線的に減少していた。この気孔率の減少に伴い、粉末同士の接合界面のネック径が増大しており、気孔率の減少にはネック部の変形が大きく寄与していることが示された。焼結体の構成相についてXRDを用いて調査したところ、ホットプレスまま材には、主構成相であるβ相に加え、α相およびα"相がXRDにより観察された。一方でホットプレス材に対して溶体化熱処理を施すと、その構成相はβ相とα"相になった。もともとのPREP粉末はβ相とα"相から構成されていたことから、ホットプレスの冷却過程にα相が析出したものと考えられる。このように冷却過程が多孔質体の相構成に大きな影響を与えている。 (2)多孔質体の弾性率 Ti-Nb-Sn合金多孔質焼結体の弾性率は、純チタンやチタン合金多孔質体の挙動と同様に、気孔率の増加に伴って直線的に減少した。これは、気孔率により弾性率の制御が可能であることを示している。また、気孔率が同じ値のときに純チタンおよびチタン合金焼結体(Ti-15Mo-5Zr-3Al)の弾性率と比較すると、Ti-Nb-Sn合金多孔質体の弾性率は最も低い値を示した。これは母合金の弾性率の順列と同じであった。また、STQ処理を施すとホットプレスままの状態よりも弾性率が低下する結果が得られた。弾性率の値は、純チタンおよびチタン合金多孔質体よりも低気孔率で皮質骨とほぼ同等に制御することが可能である。
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