純Ti表面で1週間マウス線維芽細胞L929を培養した試料(L929/Ti)、細胞培養液(MEM+FBS)もしくはHanks溶液に1週間浸漬した試料(MEM+FBS/Ti、Hanks/Ti)、表面にCollagenをコートした試料(Collagen/Ti)およびAutoclave滅菌したままの試料(Autoclaved Ti)の5種類の試料を用意した。脱気した細胞培養液に浸漬直後、-1000mV〜1000mV(vs.SCE)を印加し、電位ステップ試験を行った。このとき過渡応答電流は、電圧印可直後に急激に上昇しピーク電流密度(J_<peak>)を示した後、徐々に減少して定常電流密度(J_<const>)を示した。このとき、J_<peak>は溶液-Ti界面の電気容量およびファラデー反応の大きさに相当し、J_<const>)は各印加電位(E_<ch>)でのファラデー反応の定常反応速度に相当する。 1000mVに印加した場合を除いて、J_<peak>およびJ_<const>においてL929/TiはMEM+FBS/Tiよりも高い値を示し、Collagen/TiはHanks/TiおよびAutoclaved Tiよりも高い値を示した。L929細胞は主にCollagenを産生することから、細胞が産生したCollagenにより界面のタンパク質密度が増加し、界面の電気容量が増加することが明らかになった。細胞による界面のタンパク質密度の増加により、界面での物質拡散の抑制が示唆される。拡散が抑制される物質の種類などについては今後の検討が必要である。一方、J_<const>の増加は、細胞による界面のタンパク質密度の増加によって界面での電荷移動が容易になったためと考えられる。これは、細胞による純Tiの腐食反応の促進を示唆している。
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