研究概要 |
平成15年度は,(1)再結晶及び粒成長によるNi3Al冷間圧延箔のマクロな集合組織変化を調べ,そのうち特に(2)再結晶集合組織の形成過程を検討した.用いたNi3Al箔は単結晶を83%冷間圧延して得られたものであり,Goss方位すなわち{110}[001]に強く配向した圧延集合組織を有していた。 箔に600〜1000℃で30分の熱処理を施し,X線Schultz法によりマクロな集合組織を,走査電子顕微鏡内後方電子散乱解析装置(SEM-EBSD)により結晶方位空間分布を測定し,以下の結果を得た。 (1)再結晶により箔の集合組織は一時的に複雑なものに変化するが,その後の粒成長によって圧延集合組織と向じGoss方位に強く配向するようになる.例えば,600℃で再結晶した箔(平均粒径1μm)にはわずかに体積占有率2.8%のGoss方位粒しか存在しないのに対し,1000℃で熱処理し十分粒成長した箔(平均結晶粒径21μm)では体積の82%がGoss方位粒であった。以上は,再結晶及び粒成長過程を制御することによって,Goss方位に配向した箔が作製できることを示す。 (2)再結晶直後の微細組織には多数の焼鈍双晶が観察される.この観察結果から,複雑化する再結晶集合組織の形成過程を次のように考察した。すなわち,再結晶時に焼鈍双晶が発生し,この双晶を起点としてさらに新たな双晶が発生する過程を次々と繰り返す.その結果,初期のGoss方位とは異なる方位成分が多数混在した,複雑な再結晶集合組織が形成すると推定した.実際に,圧延Goss方位粒から発生した焼鈍双晶について第3世代まで考慮して調べたところ,再結晶粒の多くがGoss方位粒もしくは焼鈍双晶であることが明らかとなった。
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