研究代表者は太陽電池材料として期待されているCdTe半導体の低コスト成膜技術として電析法を研究してきた。ここでは、Te(IV)イオン種の溶解度が低い硫酸酸性浴にかわる電析浴としてアンモニアを含有する塩基性浴を開発し、電析時にカソード表面に可視光を照射することで電析速度が向上する光アシスト電析によってCdTe層を成膜している。 これまでの研究から、as-depositedのCdTe薄膜の問題点として、比抵抗が10^8Ωcmと非常に高いことが挙がっている。そこで本年度は、電析浴中にCdTe化合物に対してp型ドーパントとなることが期待されるNa^+イオンを添加し、得られた電析CdTe薄膜の組成や電気的特性を評価した。その結果、塩基性浴からの電析CdTeに特徴的なp型の伝導特性を保ったまま、キャリア密度を従来よりも1桁向上させ、これによって、比抵抗を10^5〜10^6Ωcmと約3桁低下させることに成功した。電析CdTeの組成はNa^+イオンの添加によっては影響を受けず、ほぼ化学量論組成であった。 また、これと平行して、電析CdTe薄膜の熱処理による粒成長と比抵抗低減を試みた。その結果、熱処理温度の上昇および時間の増大とともにCdTe結晶粒が成長することがわかり、温度400℃では、as-depositedと比較して約6倍の粒成長がみられた。温度300℃で熱処理を施したCdTe薄膜の比抵抗は2×10^4Ωcmで、熱処理前に比べ約4桁低下させることに成功した。しかしながら、熱処理後のCdTe薄膜のホール測定からは、キャリアタイプを決定することはできなかった。これは、熱処理時にCdTeが基板材料であるAuと反応し、薄膜にピンホールを生じるためであることが明らかとなった。透明導電性基板上での熱処理時の挙動を今後調べる必要があると考えられる。
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