研究代表者は太陽電池材料として期待されているCdTe半導体の低コスト成膜技術としてカソード電析法を研究してきた。ここでは、Te(IV)イオン種の溶解度が低い硫酸酸性浴にかわる電析浴としてアンモニアを含有する塩基性浴を開発し、電析時にカソード表面に可視光を照射することで電析速度が向上する光アシスト電析によってCdTe層を成膜している。 これまでの研究から、as-depositedのCdTe薄膜の問題点として、比抵抗が10^8Ωcmと非常に高く、結晶粒径が小さいことがその原因とわかった。そこで本年度は、錯形成能が大きいジエチレントリアミン(dien)を配位子として用い、Cd(II)/Te(IV)濃度比を大きくすることで、結晶性の高いCdTe薄膜を得ることを試みた。その結果、Cd(II)濃度を一定にした場合、浴中のTe(IV)濃度が低くなるほど結晶粒径の大きなCdTe薄膜が得られることがわかった。また、一定のpHの浴では、浴中のCd(II)濃度が高いほど、得られるCdTeの結晶粒が大きくなった。さらに、浴の攪拌速度の影響について調べたところ、攪拌速度が小さいほうがCdTe電析の電流効率が高いことが明らかになった。攪拌速度が小さいとカソード表面の拡散層が増大する。その結果、副反応の原因となる6価のテルル種や溶存酸素のカソード表面への物質輸送が低減され、電流効率が向上したと考えられる。電析電位の依存性についても調べたところ、電位-0.50Vでの電析物が最も高い結晶粒径となった。 また、これと平行して、オートクレープを用いたより高い浴温での電解によりCdTe薄膜や、CdTeに対してドーパントとして作用する塩化物イオンが、フォトアシスト電析挙動および得られる電析物に与える影響に関しても調べた。
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