酸化物系セラミックス、特にAl_2O_3-Y_2O_3系セラミックスの組織微細化とその成形ならびに成形体の強度について調べた。Al_2O_3-Y_2O_3擬2元系セラミックスでは、平衡、準安定の二つの共晶系が存在することが知られており、融液の最高保持温度によって制御できることが明らかとなっている。ここで、準安定共晶系に作成した試料(粉末)を用い、準安定共晶温度以上、平衡共晶温度以下で焼結することにより、均一で微細な組織を有する成形体を得ることができること、さらに得られた成形体の3点曲げ強度は祖203の焼結体の強度と同程度かより高い値を示すことが明らかとなった。しかし、成形体にはクラックなども多く、強度には大きなばらつきがあった。そこで、本年度は焼結時の充填率と強度の向上を目指して、準安定共晶組成に対してAl_2O_3を添加し、その影響を調べた。その結果、Al_2O_3量が増加し、Al_2O_3-10mol%Y_2O_3以上となるともはや微細な組織が得られなくなった。また、Al_2O_3量が増加すると焼結体の充填率が低下する傾向が見られた。しかし、3点曲げ試験結果はAl_2O_3量の増加に伴って増加する傾向にあった。これは、組織観察結果と併せて考えると、準安定共晶組成ではAl_2O_3相がYAGマトリックスに分散した状態であるのに対し、Al_2O_3量の増加に伴ってAl_2O_3相がマトリックスとなりその中にYへG相が分散する状態に変化したことに原因があると思われる。すなわち、脆いYAG相をAl_2O_3が取り囲むことで、強度が向上したものと考えられる。しかし、融点の高いAl_2O_3の増加は、焼結不足を招き、Al_2O_3粉末がそのまま残るような結果となったため、充填率が低下したものと考えられる。微細組織を得るために焼結温度には制限があるが、その中でも適切な焼結温度とAl_2O_3量と選択することによって、高い充填率と強度を両立できるものと思われる。
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