分子シミュレーションによる類似物質の高選択性無機分離膜の探索と設計

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15760557
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 古川 信一 大阪大学, 基礎工学研究科, 助手 (50333448)
• キーワード: 分子シミュレーション / ゼオライト / プロパン / プロピレン / エタノール / 水 / 吸着 / 無機膜

研究概要

高透過分離選択性が報告されているNaA型ゼオライト膜によるエタノール水溶液の濃縮に着目し、分子シミュレーションを用いて吸着と拡散特性を検討した。その際、細孔などの制限された空間の状態を効率良く再現できる分子シミュレーション手法であるOrientational-Bias Monte Carlo法を開発した。シミュレーションの結果を基に高透過分離選択性の要因を解析したところ、強吸着成分である水分子の拡散が速いことがわかり、高透過分離選択性が実現には「強吸着成分が高い拡散能をもつ膜材料」の探索および設計が必要であるという指針を明確にした。
次に、明確となった高透過分離選択性を実現する膜材料の探索指針を基に、類似分子系であるプロパン/プロピレンの膜分離に着目し、分子シミュレーションを用いて、高性能膜材料の探索を行った。本年度では、ZSM5、NaA、NaX型ゼオライトを膜材料の候補として選び、ZSM5については吸着と透過特性を、その他のゼオライトについては吸着特性を検討し、以下の知見を得た。
(1)ZSM5におけるプロパンとプロピレンの吸着能と拡散能の優位性は相反しているため、透過分離性能は非常に小さいことが分かった。
(2)Naイオンが含まれているNaAとNaX型ゼオライトの場合、骨格原子に部分電荷が存在しているため、分子内分極が大きいプロピレンの吸着力がプロパンよりも大きくなり、吸着分離係数が大きいことが分かった。

研究成果

• [文献書誌] Yi ZHANG: "Computer Simulations Studies on Gas Permeation of Propane and Propylene across ZSM-5 Membranes by a Non-Equilibrium Molecular Dynamics Technique"Separation and Purification Technology. 32. 215-221 (2003)
• [文献書誌] Yi ZHANG: "Molecular Simulation Studies on Adsorption of Propane/Propylene in NaA Zeolite by Using a Monte Carlo Technique"Journal of Chemical Engineering of Japan. 36. 1085-1094 (2003)
• [文献書誌] 新田 友茂: "吸着現象の分子シミュレーションと分離技術への応用"分離技術. 33 (3). 14-20 (2003)
• [文献書誌] Shin-ichi FURUKAWA: "Molecular Simulation Studies on Adsorption and Diffusion Behavior of Ethanol/Water Molecules in NaA Zeolite Crystal"Journal of Chemical Engineering of Japan. 37. 67-74 (2004)
• [文献書誌] Shin-ichi FURUKAWA: "Influence of Gas-Solid Kinetic Energy Exchange Processes on Gas Effusion from Slitpores in Non-Equilibrium Molecular Dynamics Simulations"Molecular Simulation. in press. (2004)
• [文献書誌] Yi ZHANG: "Monte Carlo Simulation Studies in Adsorption of Propane/Propylene in NaX Zeolite"Journal of Chemical Engineering of Japan. in press. (2004)