マイクロ蒸留デバイスは、混合、気液平衡、相分離の3つの機能を1つのマイクロチップ上で実現させたものであり、マイクロ化学プラントのための分離デバイスとして利用できる。本研究では、分離性能を向上させるため、マイクロ蒸留デバイスの最適化及びその多段化について検討を進めている。平成15年度においては、まずマイクロ蒸留デバイスの性能に強く影響する相分離部の性能を向上させるための検討を行った。気液分離用チャンネルの形状、深さと蒸留デバイス全体の性能の評価を行った結果、気液分離用チャンネルを深くすると、マイクロ蒸留デバイスの性能が格段に向上することが確認された。この理由は、気液分離デバイスの体積が大きくなったために、気液流の流速が低下したためと考えられる。一方、多段化が容易に行えるためには、マイクロ蒸留デバイスが自立的に動作する必要がある。このため、マイクロコンピュータを搭載した超小型温度調節回路を設計、製作した。この回路は、3x5cmの基板上に構成された電気回路であり、ヒーター出力制御に位相制御を、温度の制御ロジックとして、微分型P-1制御系を採用している。また、コンピュータとのインターフェースを備えており、計測した温度をコンピュータ上で観測できるほか、温度設定値や、制御ゲインなどをコンピュータからオンラインで設定することができる。このコントローラの温度変化特性を調査したところ、制御ゲインを適切に調節することにより、マイクロチップの温度を誤差1℃以内で制御できることが確認された。
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