本年度は、第一にバクテリアセルロース(以下BCと略す)のリン酸化方法の確立を行った。BCへのリン酸基導入に影響する因子について検討した結果、(1)リン酸および尿素の添加量を増すほど導入率が向上する、(2)原料の乾燥方法が導入率に影響し、凍結乾燥法によって得た原料が風乾、アルコール乾燥によって得た原料よりも導入率が大きくなる、(3)BCは木材を原料とするセルロースよりもリン酸基が導入されやすい等の知見が得られた。セルロースのリン酸化反応は一部不均一系である上、触媒作用の尿素が昇華する不安定な系である。BCへのリン酸基導入には速度論的考察がさらに必要であるが、微細繊維構造から構成されるBCはより繊維の太い木質系セルロースより化学修飾されやすいことがこれらの結果から示唆された。また、得られたリン酸化BCのSEM観察を行った結果、リン酸化BCは微細繊維構造が凝集しているもののその表面には依然原料のままの繊維構造が維持されていることが明らかになり、その拡大写真は木質系セルロースのリン酸化体とは全く異なっていた。この特殊なミクロ構造を利用した新たな機能発現が期待される。 次に、得られたリン酸化BCを用いて希土類金属(III)イオンの吸着実験を行った。リン酸化BCは酸性領域においても高い希土類金属吸着能力を示し、希土類金属(III)の吸着剤として有効であることが明らかにされた。希土類金属間の選択性については重希土に選択性を示した。これはリン酸系の吸着剤における典型的な選択性といえる。リン酸基導入率21%(リン酸基含有量1.19mol/kg)のリン酸化BCを用いて吸着実験を行った結果、吸着等温線からLa(III)イオンの吸着はLangmuir型の吸着様式であることが示され、その飽和吸着量は0.84mol/kgであった。 次年度は各種重金属の吸着を試みるほか、吸着の速度論について検討したい。
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