研究概要 |
超臨界二酸化炭素に溶解した銅の有機金属原料を熱分解し,Si基板上のTiN下地に銅薄膜を堆積するための反応器を設計,製作した。この反応器にはサファイア製の耐圧窓がついており,反応の進行を均一相およびTiN下地の色の変化として観察することができる。 原料である(hfac)_2Cuの分解・鋼薄膜形成の過程を観察するため,原料と二酸化炭素を容器に密閉し,反応器温度を上昇させながらセル内部を観察した。160℃付近で均一相(原料+二酸化炭素)が無色から緑色に変化した。これは,原料からの脱水によるものであると考えられる。250℃付近で均一相が褐色に変化した。これは,原料が熱分解したものと考えられる。しかし,この温度に至ってもTiN上に銅薄膜は形成されなかった。そこで,還元剤として水素を添加して同様な実験を行った。その結果,250℃付近で色の変化が顕著になり,滑らかな銅薄膜が得られた。膜の導電率は1.9μΩcmとバルク物性に近く,膜中不純物の少ない良好な膜であった。このことから,還元剤として水素を添加すると原料の分解が促進されるとともに,下地表面での銅の核発生が促進されるものと考えられる。しかし製膜中の原料濃度を一定にして製膜機構の精緻な解析を行うためには流通式の装置が必要であり,その際に高圧水素の連続供給がネックとなる。したがって,供給の容易な液体還元剤を探索することが課題となっている。 原料が迅速に分解し製膜が開始する温厚を色の変化として検知できたので,下地の影響を検討した。AuをTiN上にコーティングした結果,温度に対する均一相の色変化はAuの有無に依存しなかった。しかし,堆積した膜はAuコートした場合の方が滑らかであり,Auにより銅の核発生が促進されることが示唆された。すなわち,Auは原料の分解温度には影響しないものの,表面での核発生には大きく影響することがわかった。このような基板表面での現象を検知するin situ分析法,表面反射率測定や可視-紫外反射分光測定を現在検討中である。
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