研究対象となる反応機構モデル自動解析システムについて、適用可能な実験結果の範囲拡大と計算時間の短縮による利便性の向上という二つの観点から開発と評価を行った。適用範囲の拡大という観点から、複数の装置による実験データを包括的に解析し、反応機構モデルを自動的に提案するシステムの開発を行った。化学気相堆積法(CVD法)において、連続体領域での拡散反応方程式を計算することで得られる基板上での成膜速度分布(マクロな領域での実験結果)とクヌッセン拡散領域でのモンテカルロ法による計算によって得られる膜の段差被覆特性(ミクロな領域での実験結果)の二種類の実験データを包括的に用いて適切な反応モデルを提案するシステムの開発に成功した。また、扱える実験データは二種類にとどまらず、理論上は何種類でも制限なく、組み合わせて利用可能なアルゴリズムを開発することができた。一方、計算時間の短縮という観点では、ボトルネックとなっているプロセスシミュレータの計算コストを小さくするため、シミュレータの計算過程のモデル化を行い、シミュレータの計算過程をモデル化された関数で置き換える技術を開発した。特定の反応装置の場合、連続体領域での拡散反応方程式の計算結果は、小数の基底関数セットの線形結合で表現できることを示し、拡散反応方程式の計算問題を、遺伝的アルゴリズムによって定量的な線形結合式を決定する問題に変換することに成功した。また、クヌッセン拡散領域でのモンテカルロ法による計算過程は、トレーニングデータを作成してニューラルネットワークによるバックプロバゲーション法、PLS法、QPLS法によってモデル化可能であることを示した。さらにそのモデル化を研究者に代わって自動的に行うソフトウェアエージェントを開発することができた。その他、実際のプロセス開発におけるシステムの解析能力の評価を行うためにCVDによる成膜装置の作製も並行して行った。
|