限外ろ過膜と逆浸透膜の丁度中間の大きさの細孔を有する膜をナノろ過膜と呼び、その細孔径の大きさから、有機塩素化合物、農薬類、VOC類の除去など水処理や空気浄化に期待されている。現在、ナノろ過膜の素材として、ポリアミド系樹脂が一般に研究されているが、耐熱性が40℃までしかないことや、耐有機溶媒性に乏しいことから、使用可能な分離プロセスが限定される。そこで、本研究では、細孔径や細孔構造が制御可能な「周期的均一ナノ細孔を有するシリカ」に着目し、その薄膜化を行い、新規な分離プロセスを構築することを目的とした。 これまでの研究では、前駆溶液に支持体を浸漬し水熱合成によってメソポーラスシリカ膜を合成してきたが、膜厚が50μm以上と大きく、シリカ膜の透過流束を増大させるための薄膜化技術が必要となってくる。支持体支持体内部に存在するコンポジット層の厚みを減少させる手法として、支持体内部に熱分解可能な高分子(例えばポリイミド)を予め塗布し、支持体の細孔を塞ぐことによって支持体へのゾルの浸透を抑えた。これにより膜厚を1/10まで減少させることができた。また、高分子膜を塗布することによって支持体表面が平坦になり、メソポーラスシリカの周期構造の規則性が向上することがわかった。 得られた膜のガス透過実験より、無機ガスの透過係数が従来膜の10倍以上となり薄膜化による高流束化が可能であることが示唆された。
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