研究概要 |
本研究は、疾病原因酵素を阻害するDNAアプタマーを、申請者の開発した新規進化的手法を用いて探索することを目的としている。平成15年度は「疾病原因酵素の精製とこれに結合するDNAアプタマーのSELEXによる探索」をまず目的として研究を行った。 歯周病の原因となるPorphyromonas ginigivalisのgingipainと日本で発生する食中毒の主な原因菌であるサルモネラが持つシアリダーゼを標的酵素とし、これらの単離精製を行った。Gカルテット構造を形成する様に設計したライブラリー(Gライブラリー)を合成して、標的酵素に、これを添加してSELEXを数ラウンド行い標的酵素に結合するDNAアプタマーを探索した。しかし、得られたアプタマーは強い結合を示さず、かつ酵素阻害活性は示さなかった。これは固定化担体に人食い的に結合するアプタマーが得られたためだと考えられ、今後スクリーニング条件を詳細に検討し、最適化する必要がある。 そこで、酵素阻害活性を持つアプタマーを効率よく探索する手法として、コンピューター内進化を利用した新しい進化工学的手法の開発を行った。本手法はコンピューター内進化を利用することで、酵素阻害を指標とした探索を可能とすることを特色とするが、個々のDNAの酵素阻害を検討する必要があるので、膨大な多様性を有するDNAライブラリーを探索するにはある程度、阻害活性が期待できるアプタマーの絞り込みを行う必要がある。酵素阻害アプタマーは酵素の活性部位などに結合するはずであり、まずSELEXである程度標的酵素に結合するDNAアプタマーを絞り込み、その後酵素阻害を指標とした探索を行った。モデルとしてTaq DNA polymeraseを標的酵素とし,この手法を用いて活性を阻害するアプタマーを探索したところ、IC_<50>がnMレベルの強い阻害能を示すアプタマーを得ることができた。
|