研究概要 |
近年、遺伝子解析用マイクロ・ナノデバイスの開発が行われている。すでに、DNAチップやマイクロチップ電気泳動システムが実用化され、少ない試薬量で多サンプル、高速解析が可能であることから、ナノテクノロジーを利用する動きは今後さらに拡大し、多種多様な解析システムが開発されるものと考えられる。しかし、微少サンプルによる解析は必然的に検出感度の低下を招く他、遺伝子診断においては、検体中に微量に存在するmRNAや感染症病原菌等の特定遺伝子を対象としているためサブmLオーダーの検体量が必要であり、オンチップデバイスの実用化において大きな障害となっている。そこで、マクロからミクロへのインターフェースに着目し、核酸を濃縮するための技術開発を本研究の目的とした。具体的には、電気泳動で核酸を微小な透析膜上に捕集・濃縮する方法について検討した。核酸濃縮に用いた電気泳動システムとしては、検体を入れるプラスチック容器に微小な穴をあけて透析膜を貼り、それを別の容器に入れて両方の容器に電極を挿入して電解できるシステムを作製した。このシステムを用い、蛍光色素で染色した核酸の濃縮条件について検討した。まず、核酸の濃縮条件をキシレンシアノール、ブロモフェノールブルー等の電気泳動における色素マーカーを用いて検討した。電気泳動用の緩衝液を比較検討した結果、アノード側にTBE緩衝液、カソード側に10mM Tris-HCl,10mM EDTAを用いた際に透析膜近傍での気泡の発生もなく濃縮が可能であることが示された。そこで、20ng/mL〜20μg/mLのssDNA(53mer)を用いて22Vにて電解を行い核酸染色用の蛍光色素Oligreenで染色した結果、どの濃度においてもssDNAを透析膜上に濃縮することが可能であった。以上のことから、電気泳動を利用し、核酸を透析膜上に濃縮可能であることが示された。これより、濃縮した核酸をマイクロ・ナノデバイスを用いて解析を行うことが可能となる他、PCR等によるDNA増幅を用いない検出が可能となると考えられる。
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