研究概要 |
現在、腎臓や肝臓のように複雑な構造と機能を持つ器官構造を再構築するために、Organ Engineeringという次世代型Tissue Engineeringの概念が提唱されている。本研究では、磁性微粒子で細胞を標識し、磁力で引きつけることによって細胞を配置・接着させて三次元組織を構築する。このことで、心筋や皮膚のような、単一細胞を重層化させることで機能がはるかに促進される器官や、あるいは肝臓や腎臓など、複数の種類の細胞が綿密に相互作用することによって機能が発揮される器官が、重層組織として構築できる。このように、磁力によって細胞を配置・配列できる新しい技術を確立し、複雑な構造と機能をもつ器官構造を再構築するOrgan Engineeringの中核技術とすることを目的とする。 本年度は以下の項目について研究を行った。 1.機能性磁性微粒子の作成と結合能測定 (1)マグネタイトカチオニックリポソーム(MCL) 細胞が負に帯電していることを利用して、正の電荷をもつリポソームに包埋したマグネタイト(Magnetite Cationic Liposome, MCL)の利用を検討した。MCLを表皮角化細胞、血管内皮細胞に添加したところ、添加したMCLの内50%程度がそれぞれの細胞に取り込まれた。一方、それに伴う細胞毒性は全く示さなかった。 2.磁力による三次元生体組織の構築 (1)MCLを用いた皮膚組織の開発 表皮角化細胞にMCLを結合させ、単層接着培養していた細胞に添加した。培養皿の下にネオジ磁石を置き、添加細胞を集積させたところ、皮膚細胞シートが形成された。 (2)MCLを用いた肝臓組織の開発 MCLを結合させた血管内皮細胞を、単層接着培養していた血管内皮細胞に添加した。これを肝実質細胞上に添加して磁力で重層化させた。このことによって、肝実質細胞のアルブミン分泌能が飛躍的に上昇した。
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