双翅目昆虫特異的Cry毒素であるCry4Aについて、標的昆虫ではなく殺虫活性を示さないカイコに対してin vivo免疫染色を行い、鱗翅目昆虫特異的Cry毒素でありカイコに殺虫活性を有するCry1Aaと同様、中腸上皮細胞刷子縁膜に結合することを発見した。さらにin vitroにおいてジゴキシゲニン標識したCry4A及びCry1Aaを用いたリガンドブロッティング、膜小胞共沈実験、プロテイナーゼKプロテクションアッセイ、オリゴメライゼーションアッセイを行った結果、カイコに対して、殺虫活性を有さないCry4AはCry1Aaと同様に、カイコ中腸上皮細胞膜に結合し、膜に挿入してオリゴマーを形成することが示唆された。従ってCry4Aについては、殺虫特異性は中腸上皮細胞膜との結合の有無で決定されないことが示唆された(投稿準備中)。続いて、同じく双翅目昆虫特異的Cry毒素であるCry11Aについて、標的昆虫であるアカイエカ幼虫の中腸上皮細胞膜に対する膜結合特性を検討するために、Cry11Aの活性型分子種を同定した。活性型Cry11A分子は36kDaと32kDaのポリペプチドからなるヘテロダイマーであり、36kDaのC末端側104アミノ酸からなる領域が殺虫活性の発現に重要であることが示唆された(Yamagiwa et al.2004)。引き続き、膜小胞共沈実験とプロテイナーゼKプロテクションアッセイを行っている。さらに、哺乳類細胞特異的認識Cry毒素である29kDaポリペプチド(p29)はヒト白血病ガン細胞Jurkatに対して強い細胞損傷活性を有するが、ヒト胎児腎臓細胞HEK293には極めて細胞損傷活性が弱い。それぞれの細胞より膜画分を調製し、ジゴキシゲニン標識したp29を用いてリガンドブロッティングを行ったところ、Jurkat膜画分にのみ存在する43kDaと32kDaのポリペプチドを発見した。これらの膜タンパク質がp29に対して受容体として機能していることが示唆されるため、さらに詳しく解析していく。
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