研究概要 |
ポストゲノム時代の到来とともに、得られたデータベースを如何に有効に利用するのかという点に注目が集まっている。一方で、このことは遺伝子産物であるタンパク質や酵素の種類には限りがあるという事を意映しており、既知産物に対する新しい利用方法を開発することは、今後ますます重要になって来ることと思われる。 金属酵素は、その活性の発現に特有のコファクター(金属イオン)が必要であり、コファクターを除去してしまうと活性を消失し、付与することによって活性の回復が見られることが知られている。この現象を可逆的に繰り返すことのできる系を構築する事により、コファクターを用いて酵素活性のON/OFFが制御できる分子スイッチを作製することが可能になると考えた。そのため、その基本的知見を得ることを目的として本研究を行った。 コファクターによる酵素活性の制御を詳細に調べるために、金管に2-アミノエタンチオールを用いてアミノ基を導入、グルタルアルデヒド架橋法により金属酵素の一種であるアルカリホスファターゼ(ALP)を固定化した微小カラムを作製し、FIA(Flow Injection Analysis)システムに導入した。基質にPNPP(p-nitrophenyl phosphate)を用い吸光度変化から酵素活性を評価した。本システムにおける酵素活性はr.s.d.≒1%と高い安定性を示した。酵素活性制御に重要なコファクター(Zn(II)イオン)に関しては、10mMクエン酸を含む100mM PDC(2,6-pyridinedicarboxylic acid)を500μl通液することにより最も効果的に活性を消失させることが可能であり、その後に付与するZn(II)イオンは0.1μM-5.0μMの範囲においてZn(II)イオンの濃度に比例して活性の回復が見られた。これらのことより、コファクターであるZn(II)イオンにより微小カラムの活性のON/OFFを制御出来ることが示されたとともに、様残な濃度のZn(II)イオンを付与することにより、段階的に酵素活性を回復させることが可能であり、酵素活性を制御できることが確認された。更に、回復した酵素活性を指標にすることにより、当該システムが亜鉛の計測にも適応可能であることが示された。また金属酵素にサーモリシンを用いた系においても構築、酵素活性制御のための知見を得た。
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