太陽風プラズマ流を宇宙機の作る磁場でせき止めて深宇宙を航行するのが、新しい宇宙機推進システム「太陽風プラズマ推進」である。本研究では、太陽風を模擬したプラズマ流と、磁場を作る電磁石、そして電磁石のつくる磁場を広く展開して推力を増すためのプラズマ噴射装置、といった一連のシステムを真空チャンバー中に実現して評価する事を目的としている。 平成16年度は、このうち太陽風を模擬したプラズマ流を電磁流体アークジェット装置によって実現し、実験に必要な10^<19>m^<-3>といった非常に大きなプラズマ密度にて20km/sの高速プラズマジェットを可能にした。この高密度高速プラズマジェット中に中心磁場1Tの電磁石を挿入すると、プラズマジェットの運動量が0.1N程度変化した。従って、太陽風プラズマ推進の最も基本となる推力発生原理が実験的に確認された事になる。今後は、磁場を拡げるためのプラズマ噴射装置を組み合わせた際の推力評価を行なうなど、この推進システムの性能上限を明らかにするための、更に詳細にわたる実験を進めていく。 実験に並行して、理論解析によって太陽風プラズマ推進の「推力公式」を導くと共に、性能臨界評価を行ってきた。理論解析は、太陽風プラズマ推進が従来のイオンスラスタなどの電気推進に比べて非常に大きな推力電力比を実現できる事を示している。今後は、宇宙機システムとして必要なリソースの詳細検討を行なうなど、太陽風プラズマ推進がシステムとして他の推進システムに対して優位であるかどうか、結論を出すべく研究を進めていく。
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