太陽風プラズマ流を宇宙機の作る人工的な磁場でせき止めて深宇宙を航行するのが、新しい宇宙機推進システム「太陽風プラズマ推進」である。本研究では、太陽風を模擬したプラズマ流と、磁場を作る電磁石、そして電磁石のつくる磁場を広く展開して推力を増すためのプラズマ噴射装置、といった一連のシステムを真空チャンバー中に実現して評価する事を目的としている。 平成17年度は、電磁流体アークジェット装置から供給される高密度高速プラズマジェット中に中心磁場2Tまでの電磁石(コイル)を挿入した実験を重点的に行なった。中心磁場強度と共にコイルを通過する際のプラズマジェットの運動量変化(すなわちコイルにかかる推力)が大きくなる。特に中心磁場が2Tのケースでは地球磁気圏と同様の衝撃波を伴うプラズマ流が観側され、地球磁気圏と相似になる電磁流体的な干渉にて大きな推力が得られることが確認された。また、磁場を拡げるためのプラズマ噴射装置の設計開発を進め、模擬太陽風源との同時運用には至らなかったが、これにより装置のほぼ全系を開発することができた。 太陽風プラズマ推進は、従来のイオンスラスタなどの電気推進に比べて非常に大きな推力電力比を実現できる事が、実験および、実験と並行して進めた理論解析から明らかになっている。しかし、宇宙機システムとして必要なリソースの検討を行ったところ、電磁石の軽量化や磁場インフレーションに必要なプラズマ源の低電力化など、太陽風プラズマ推進が他の推進システムに対して優位であるためには、各種要素技術の最適化が必要であることが示唆された。
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