研究概要 |
本研究に使用した吸水材ゲルは通常の高吸水性ポリマーではなく、体積相転移を起こすことが知られているPNIPAゲルであり、次のようにゲルパウダーを作製した。N-イソプロピルアクリルアミド、N,N'メチレンビスアクリルアミド、テトラメチルエチレンジアミン、アクリル酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムを重合してゲル化させ、そのゲルを十分乾燥させて粉砕機及びふるいにより500μm以下のゲルパウダーとした。そのゲルパウダーをコットンを重ねたシート上に均等においてパッキングし、吸水ゲルシートとした。 はじめにゲルシートに十分吸水させ、吸水量を調べた。その後、そのシートが乾燥する時間を自然乾燥及び電熱線による加熱乾燥に分けて計測した。本シートとの比較のために市販のSAPシートも同様に計測した。 それらの結果から両者のシートに同量の水を吸収させた場合、自然乾燥ではほぼ同じ時間に乾燥することが明らかとなった。また、加熱乾燥では本研究のPNIPAゲルシートの方がSAPシートに比べ約半分の時間で乾燥することが明らかとなった。これは自然乾燥の場合、両シートとも吸水材からゆっくりと水が蒸発していくので、粒径が同じくらいであればほぼ同じ時間に乾燥することは容易に想像がつく。一方、加熱乾燥の場合、PNIPAの転移温度以上にシート温度を上げることによってPNIPAゲルは体積相転移を起こし、水を吸水している膨潤相から急激に収縮相へ相転移を起こし、一気にゲル中の水を吐き出す。これに対しSAPは体積相転移を起こさないので加熱によってもただ蒸発が促されるだけとなり、両者に乾燥時間の大きな違いが出たと思われる。 しかしながら急激にPNIPAゲルから出た水が再びコットンに吸われるためシート全体の乾燥には吸水材の差ほど変化が大きくないので、今後、コットンに変わるシートを見つけ出す必要がある。これにより格段に乾燥時間が短縮されると思われる。
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