研究概要 |
既往の研究から灰溶融条件において1200℃を超えると揮発性金属が排ガス側に分配され,その揮発傾向は還元雰囲気の方が著しいことがわかっている。しかし,ガス化溶融条件の場合には多量のチャー粒子が灰粒子と共存するため,それらが局所的な強い還元雰囲気を作り出すことによって,重金属放出が灰溶融条件と大きく異なる懸念がある。そこで本研究では,焼却灰にカーボン粒子を添加することによって模擬溶融試料を調整し,炭素成分含有焼却灰溶融条件での重金属放出特性の実験的検討を行った。灰試料にはシュレッダダスト流動層燃焼焼却灰を用いて,カーボン粒子の添加量は灰試料の5,15,30wt%とした。その加熱溶融試験には小型高周波誘導加熱装置を使用した。また,溶融試料は融剤を用いた融解法で水溶液化し,ICP発光分光分析器で組成分析を行った。その結果,Ca,Fe,Ti,Ni等の灰中主成分元素はカーボン添加量や溶融温度に関わらず各金属のほぼ100%がスラグに残存するのに対して,Zn,Pbの揮発性重金属は1200℃以下でカーボン添加によりガス側に金属が放出する傾向が強くなった。また,SEM/EDXによる観察から,カーボン含有量5%時の溶融状態は容器壁面と底面と大きく二通りに分かれた。壁面はAl,Ca,Si等の主成分が結晶化している状態であり,底面はFe,Cuが析出している部分が確認された。一方,炭素含有量30%時には溶融しないで粒子状を保つ傾向にあり,EDXからも金属成分が存在しているまわりを炭素粒子が覆っている状態が確認された。このことよりカーボン粒子が金属の溶融性を阻害していると考察した。また,平衡計算からも溶融物の重金属形態予測を行い,重金属の揮発特性を確認することができた。
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