研究概要 |
環境問題が広域化・複雑化する中で、環境汚染の予見・予防・保全技術に関する総合的な研究への展開が緊急に求められている。これまで、1960年代の公害問題を通じて大気と水の汚染問題についてはその重要性が指摘され、様々な研究が実施され多くの知見が得られた。しかし、土壌や岩石と言った地盤材料内部での地層汚染問題、つまり汚染物質の地盤材料中での拡散・分散については未解明の点が多く、かつ研究方法も十分に確立されていないのが現状である。 地盤材料中の透水特性を支配する主要因の一つには亀裂があげられる。すなわち,地盤材料マトリクス部に比較して亀裂が存在する場合には、そこが卓越した流路となる場合が多く,汚染物質拡散の主要因と考えられる。したがって本年度は,強い不均質性を有する地盤材料中の亀裂の存在に注目し,X線CT(X-ray Computed Tomography)による画像データを用いて,地盤材料中に存在する開口亀裂の分析方法について検討した。 さらに,汚染物質の分散・拡散現象を可視化するための高密度の造影剤の開発を実施した。これまでの実績からここでは造影剤のベースとしてヨウ化カリウム溶液を取り上げ、他の溶液を混合することにより水に近い粘性を持つ造影剤を開発した。本トレーサーの開発により,水の流れに影響を及ぼさない状態で,X線CTでの溶質の拡散・分散を可視化が可能であると考えられる。 次年度においてはこれらの知見を基に,複雑な幾何学的形状を示す天然亀裂内部の透水現象ならびに亀裂内流体から地盤材料マトリクス部への溶質の拡散・分散現象を可視化し,X線CT画像データを用いた分析方法について検討する予定である。
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