研究概要 |
トカマク・ヘリカル等の磁場閉じ込め型核融合装置において問題となっている,磁場の周期性(トロイダルリップル・ヘリカルリップル)に起因する粒子損失を改善することは,α粒子加熱の高効率化にとって非常に重要である.このリップル損失の物理的解明には,イオンの速度分布・ピッチ角分布の計測が必要不可欠であるが,従来より広く用いられている荷電交換中性粒子分析器は計測装置の大型化が問題であり,たとえばトーラス内側等に損失する粒子のピッチ角分布を計測することが困難である.本研究では,小型で可搬性の高い高エネルギーイオンのピッチ角分布検出器の開発を第一の主眼に置き,今年度は(1)検出器の設計・製作,(2)実機への適用を目指した数値計算,を行った.以下にその具体的な成果を述べる. (1)検出器の設計・製作 本計測器は小型の高エネルギー検出器を真空容器内に設置し,直接イオンを検出できる様にすることが目標である.そこで,検出部としてシンチレータ付のフォトダイオードアレイ(浜松ホトニクス社製:S5668)を採用し,アレイ方向にピッチ角が相当するように検出器を設計した.また,磁場・真空中で使用可能な小型のプリアンプを設計・製作した.検出部はx線にも感度を有するため,検出部が直接プラズマからのx線を見込まない様に検出部の位置,アパーチャー(ピンホール)の形状を工夫し,その設計・製作が完了した.さらに実機への適用を考え,計測箇所・角度を変えられるように,小型のマニピュレータ付の真空導入装置を設計した.この真空導入装置は現在製作中である. 2.実機への適用のための数値計算 本検出器をヘリカル軸ヘリオトロン装置(ヘリオトロンJ)に適用するため,イオンがどの領域に,どういったエネルギー・ピッチ角で損失するかを調べるため数値計算を行った.具体的に,イオンのドリフト方程式に基づく案内中心の無衝突軌道計算を実座標で行い,イオンが真空容器壁面に到達するまでの軌道を追跡した.その結果,検出器を設置する箇所の特定・方法が得られた. 来年度は真空導入装置の製作が終了後,較正実験・実機への設置を行い,実際にピッチ角分布の測定を開始する予定である.
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