核融合炉を目指す高温プラズマ閉じ込めの研究において、異常拡散によりプラズマ閉じ込めが劣化することが大きな問題となっている。この閉じ込め劣化の原因として考えられているプラズマ中の静電的ミクロ不安定性や電磁流体力学的(MHD)不安定性によるプラズマの揺動損失についての知見を得るためには、プラズマ中の局所的な位置での揺動、特に密度揺動の空間構造を計測することを目的とした新しい計測器の開発が不可欠である。これを達成するため、超短パルスが作り出す広帯域マイクロ波を利用した超高時間分解計測でありかつ広空間を単一発信源で計測可能なマイクロ波反射計システムの構築を行った。特に超短パルスにより発生したマイクロ波から、計測したい領域をフィルタで切り出すために、周波数可変の発振器から出力されたマイクロ波を合成し周波数をシフトさせたこの合成マイクロ波パルスを用いるというよりアクティブな計測システムを構築して、プラズマ中から反射してきたマイクロ波を受信するレーダ計測を行った。 本研究により開発した周波数可変発振器の周波数設定回路を利用し、任意の周波数にプラズマ放電中にリアルタイムで設定できることを実証した。これによりプラズマ周辺部の最外郭磁気面外側に密度揺動が局所的に存在することを発見することができた。また超短パルスから8〜40GHzの広帯域のマイクロ波を任意に抽出する手法を確立した。これにより複数帯域にわたる周波数成分をそれぞれ必要十分な信号強度に増幅し計測に必要なマイクロ波成分が生成可能となった。また従前より4倍の空間分解能で計測が可能なシステムを構築し、適用した大型ヘリカル装置(LHD)を用いたプラズマ実験では、周辺プラズマの詳細な電子密度分布が得ることができるようになり、幅1cm程度の磁気島の存在やその周辺領域での揺動現象などを観測することができた。
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