研究概要 |
球状トカマクに生起する圧縮アルヴェン固有モード(CAE)不安定性の性質を把握する目的で,非線形磁気流体(MHD)モデルを基本とするいくつかのモデルを用いて、数値シミュレーションにより調べた.球状トカマクに現れる不安定性には,様々な種類のモードが含まれるが、磁気シアが大きく比較的高いベータ値にて維持される配位の特徴を反映して、ユニークなモードが支配的となる場合が多い。従来のMHDモデルはラーマ半径の小さい極限にて成立する最低次の近似モデルであり、現実の球状トカマクの不安定性を記述するには、主崩壊現象のような激しい種類のものでもなお現象の特徴的時間スケールは長いため、より現実的なモデリングには更に高次の近似モデルが必要となる。このような高次の修正項を含むモデルでは、自発的に形成される不安定性のモード構造が、指数関数的な成長成分に重畳して回転成分を含むようになる。球状トカマクの圧力勾配の大きな配位においては、まず最も低次の修正項としは、反磁性ドリフト効果が重要となる。今年度は主にその効果を調べた。イオン反磁性ドリフト項を含むドリフト-MHD方程式系を用いて、球状トカマクにおけるバルーニングモードの時間発展を調べた。その結果、最低次の修正項が圧力勾配の大きな部分に局在するモード構造を乱すことにより、不安定性の成長率に影響が現れること、またそれが非線形発展段階に到った場合には、逆にMHD項のみで殆ど決定される大域的な振る舞いにより現象が推移することなどが明らかになり、その成果は論文(第11項参照)にまとめた。また夏に行われた国際会議(プラズマ数値シミュレーション国際会議)および秋に行われたワークショップ(日米球状トカマク会合)にて成果発表を行った。
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