研究概要 |
初年度は検出器の最適化シミュレーション計算と、単電子トランジスタ(SET)素子作製に特化した真空蒸着装置の改造を行った。 シミュレーション計算では、メンブレムサイズ、メンブレム厚、SET配置位置を設計パラメータとした検出器最適化計算を行い、超高位置分解能検出器としての設計を行った。その結果、位置分解能の目標値を既存の検出器で最高と考えられるCR39+AFM法の100nmとし、感度が5x10^<-9>Sの電流計を用いた場合、メンブレムサイズを10μm四方、単電子トランジスタをメンブレム上に6x8μmの領域の頂点に配置すると、応答時間8μsec.を有する目標位置分解能を満たす検出器が構成可能であることが分かった。本サイズは、細胞数個の大きさをカバーするのに十分であり、細胞を対象とした放射線イメージングとして十分適用可能であると考えられる。また、より広範囲な有効領域を持たせた場合の変化を検討した結果、1mm四方のメンブレムサイズで応答時間が1msec.,5mm四方で数百msec.と、応答時間が悪化する結果となり、位置分解能も同じく悪化する結果となったため、mm以下の有効領域で使用する方が望ましい結論となった。 SET素子の作製のため、本検出器に適したSETの作製方法を検討した。その結果、メンブレム上に配置する必要上、半導体系のSETをメンブレム上に製膜しパターニングするよりは、金属蒸着及び酸化法によりSETをメンブレム上に直接作製するのが望ましいと考えられる。そのため、本研究では蒸着が容易かつSETとして実績のあるAl金属蒸着法を用いることにし、多重各蒸着法によりSETの作製を行うことにした。そのため、現有の真空蒸着装置に、蒸着角度可変のサンプルホルダーと、高純度酸素導入系を新たに整備し、所定の性能を有することを確認した。これにより次年度早々にSETの作製を行い、SET単体での実験的性能評価から前述設計の妥当性を確認し、最終的に検出器としての動作確認を行う予定である。 なお本研究のアイディアはオリジナル性が高いと判断したため、二次元検出器および取得方式として特許を出願した。
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