研究概要 |
前年度に引き続き、単電子トランジスタ(SET)の温度計としての実験的特性評価を目的として、SETの作製を試みた。 具体的には、Dot size 300nmのSET作製を目標に、製作技術の検討を行い、製作過程の中でSETのSource-Dot、Dot-Drain間トンネル接合のトンネル障壁の作製が最重要項目となることを見出した。ここで、Alの表面を酸化させ絶縁障壁を形成しトンネル障壁として用いるが、この絶縁障壁が薄すぎれば障壁として成り立たず、また厚すぎれば電子はトンネルすることができずSETとして動作しない。そこで、表面酸化膜の厚さ制御が可能である2重角蒸着法を採用し、前年度に蒸着角度可変のサンプルホルダーと高純度酸素導入系を整備した真空蒸着装置を使用して、SET作製を試みた。 名古屋大学ベンチャービジネスラボ電子線描画装置及び改造済み真空蒸着装置を用いて作製を試み、外観的には、Dot size=850×240nm,トンネル接合面積=130×180nm,150×200nmのSETが作製された。そこで、SETの2重トンネル接合は室温において単なる抵抗として動作するので、まず室温における特性を測定したところ、トンネル抵抗はほぼ文献等殻妥当な値である2.25MΩと見積もられた。続いて、フロー型クライオスタットを用いて液体窒素及び液体ヘリウム温度にてSETの特性の測定を行ったが、残念ながら現時点で明確な特性(クーロンブロッケード等)は得られなかった。しかし、クーロンブロッケードの兆候とおぼしきコンダクタンスのピークが確認でき、クライオスタットの到達温度の改善とドットサイズの縮小化を図れば、明確なピークを持ったSETが作製できると期待される。来年度早々にもより小さなドットサイズを持ったSETの作製を試み、実験的に特性を評価し検出器の性能評価を行う予定である。
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