本研究は、電子ライナックの短バンチビームを用いたテラヘルツ・ミリ波領域におけるコヒーレントなチェレンコフ放射の基礎的性質を実験的に解明し、新型チェレンコフメーザー開発のための基礎研究を行うことを目的とする。昨年度は、ビームトランスポート系下流に設けた真空槽の中で数種類の誘電体を交換し、電子ビームからの距離、角度などを変化させる操作を真空容器外部から行うためのシステムを構築したが、今年度は、真空槽の中に鏡2枚からなる光共振器を取り付け、外部からリモート制御可能なシステムを構築した。 この光共振器を用いて、まず誘電体を用いない場合のコヒーレント遷移放射の増幅を試みたが、波長分布が変化したのみで、光強度の増加は見られなかった。昨年度の研究で新たに開発したビーム診断法により、4マイクロ秒幅のパルスの中では、バンチ間隔が最大60フェムト秒の揺らぎを持っていることが初めて明らかにされたが、光パルスが共振器の中で多数回反射を繰り返す間に、そのバンチ間隔のずれが増幅され、光パルスがうまく重なり合わないことが、メーザー増幅を抑制している原因として考えられる。したがって、誘電体を用いるチェレンコフメーザーにおいても大きな増幅率を得るためには、バンチ間隔の揺らぎの原因である、電子加速に使うマイクロ波の位相揺らぎを小さくするよう、加速器を改造するか、位相揺らぎのない加速器を用いる必要がある。
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