まず本年度は、業務需要家の中でも温熱需要の大きな病院に対して導入されたマイクロガスタービンコージェネレーションシステムを対象として、電力系統運用・計画の観点からみて発電出力を適切に誘導するため、一般電気事業者からインセンティブ価格が与えられるものと想定し、出力変化幅とインセンティブ価格の関係を季節別・時刻別に明らかにした。この結果、発電出力を増加させる方向に関しては、熱需要が大きな夏期と冬期において、排熱が増加しても有効利用できるため、比較的安価なインセンティブ価格であっても、需要家はマイクロガスタービン出力を増加させることが分かった。また、発電出力の減少方向に関しては、夏期および冬期は大きな熱需要への供給を満たすため、マイクロガスタービン出力に最小値制約が課せられることも明らかとなった。さらに、マイクロガスタービンを始め、コージェネレーションを構成する機器は、部分負荷状態で運転されることも多いため、これら部分負荷時の効率低下が出力変化幅へ与える影響も評価した。 また、次年度の研究内容として掲げていた、住宅用のコージェネレーションシステムについても一部予備的な検討を着手した。研究代表者の所属する研究室では、多数の住宅におけるエネルギー消費実測調査を行っており、この中で熱需要の大きな5軒を選定し、ガスエンジンコージェネの導入を想定した。予備的検討として電力系統において需給の逼迫する夏期(8月)に着目し、5台のガスエンジンコージェネが協調的に出力調整することによって、どの程度の出力変化幅がいくらの追加的なコストで得られるかについて評価した。この結果、6円/kWh程度の追加的なコストで、系統側へ安定的に貢献できる可能性があることが分かった。
|