本研究は、移入種であるニジマスの定着をゆるす環境条件および本種が在来サケ科魚類に及ぼす影響を検討することが目的であり、具体的には以下4点を明らかにすることを目的としている。 (1)ニジマス定着河川の特徴(非生物的側面から見た定着可能条件) (2)ニジマス生息量と在来種の生息量との関係(生物学的側面から見た定着可能条件、在来種への影響) (3)在来種との生息空間および食物利用の重複度合い(潜在的な競合度) (4)ニジマスと在来種間での資源分割および相互干渉(在来種との共存様式、ニジマスの優位性の是非) 平成15年度は、これらのうち、(1)と(2)を明らかにするために、北海道胆振地方の15河川26地点に調査区間を設け、各区間で魚類の生息密度を推定するとともに、水温、水位変動、河道形態等を表す環境要素の計測を行った。これらのデータを解析した結果、ニジマスの分布は、水位変動の小さい河川に限られていることが示された。また、ニジマス生息量と在来サケ科魚類(サクラマス、アメマス)の生息量との間には相補的な関係が見られ、これらの魚種との間に負の相互作用が働いていることが示唆された。今後、上記(3)、(4)に関する調査・解析を行うことにより、ニジマスが在来魚種を駆逐しているのか、それとも逆に在来魚種の存在がニジマス定着の制限要因となっているのかについて明らかにしていく予定である。
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