研究課題
本研究は、東アジアの多雨林の純一次生産量の長期変動を明らかにすることを第一の目的としている。植物は光合成によって二酸化炭素を固定して有機物を生産している。この総生産量から呼吸による損失量を差し引いた量が純一次生産量であり、地上部については、森林の現存量(幹と大枝)の増加分+葉や小枝の生産量として定義される。森林の現存量の増加分は樹木サイズの継続測定によって既存の経験式を用いて推定できる。葉や小枝の生産量を直接測定するのは困難であるが、原生的森林では生産量と死亡量がつり合うと仮定できるので、リター(落葉・落枝)量の測定によって推定できる。温帯と熱帯の調査地を比較することで、地理変異についても明らかにすることが第二の目的である。これまで、リター量については、キナバル山では共同研究により7年間におよぶデータが蓄積され、屋久島では申請者自身により5年間のデータが揃っている。リター量は年変動が大きく、平均値の推定と長期変動パターンの検出には長期間の調査が必要とされる。そこで、本年度も、屋久島で引き続きリタートラップによるリター量のモニタリングをおこなった。リタートラップにたまった落葉・落枝は申請者がおおよそ月1回のペースで回収し、葉・繁殖器官・枝・その他に分別して乾重を測定した。6年間調査した4か所の調査地の間には、同調した年変動が見られ、最大の年は最小の年の1.4-1.5倍の速度を示した。リターの内訳を見ると、繁殖器官の同調性が顕著であった。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (3件)
Plant Ecology 174
ページ: 147-161
Ecosystems 7
ページ: 259-274
Oecologia 140
ページ: 335-339