研究課題
森林タイプによって植物への栄養塩供給の季節性が異なるという仮説を検証するために、ミズナラ・ブナ林(落葉広葉樹林)とヒノキ・ツガ林(常緑針葉樹林)において、土壌中の無機態窒素量(アンモニア態窒素、硝酸態窒素)の季節変化を測定した。同時に、微生物による栄養塩供給に影響を与えると予想される、リターの供給量とC/N比、土壌微生物バイオマス、土壌呼吸速度の季節変化についても測定をおこなった。まず、無機態窒素の量であるが、ミズナラ・ブナ林では、6月、8月、10月にアンモニア態窒素量のピークが見られ、硝酸態窒素量は5月に最大値を示し、10月にも弱いピークが見られた。ヒノキ・ツガ林では、5月、9月、10月にアンモニア態窒素量のピークが見られ、硝酸態窒素量も5〜6月と10〜12月にピークを示した。つまり、両林ともに土壌中の無機態窒素量の季節変化パターンはほぼ同じで春と秋に無機態窒素量のピークが見られた。次にリターの供給量およびC/N比であるが、リター供給量は両林共に秋にピークを示した。高木優占種3種の平均C/N比は、ミズナラ・ブナ林では39、ヒノキ・ツガ林では86であった。土壌微生物による分解活性の指標である土壌呼吸速度は、両林ともに、地温の上昇とともに春〜夏期に増加し、冬に低下するという、温帯林に典型的な季節変化を示した。土壌微生物量は、両林共に10〜12月に最大値を示し、微生物の増殖期は1〜3月の冬期、増殖期は、10〜11月の秋期であることが明らかになった。今後はこれらの結果を解析し、上記仮説の検証するとともに、来年度以降、新たに設置する常緑照葉樹林においても同様の調査をおこなう予定である。
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