カスミサンショウウオ(Hynobius nebulosus)の遺伝子解析用のサンプル収集は、福岡県北九州市若松区内の20集団において行った。すべての集団をあわせて合計約200卵塊を発見したが、集団へのインパクトを最小限にするために、各卵塊から3〜6卵(卵塊内の全卵の数パーセントにあたる)を切り取り、残りは、現地にそのまま残した。切除処理をした卵塊の切り口から、未発達の胚が卵塊から離脱するのを防止するために、切り口を絹や木綿等の糸で縛るなど、細心の注意を払いながら、サンプリングを行っている。また、成体も合計20個体発見したが、尾の先を数ミリ切除し、遺伝子解析用のサンプルとした。 遺伝子マーカーの開発については、ミトコンドリアDNAおよびマイクロサテライトDNAについて行っている。ミトコンドリアDNAについては、遺伝子データベースDDBJから、すでに発表されているチュウゴクオオサンショウウオおよびセイホウサンショウウオの全塩基配列をダウンロードし、その情報をもとに、カスミサンショウウオのD-loop領域を特異的に増幅させるプライマーの設計を行った。その結果、同領域の910塩基対を特異的に増幅させるプライマーの設計に成功した。また、マイクロサテライトDNAマーカーの開発については、現在までにDDBJで公開されている北米産の小型サンショウウオのマイクロサテライト領域について、30遺伝子座のプライマーを合成し、カスミサンショウウオに利用可能かチエックした。その結果、いくつかの遺伝子座について、増幅され、かつ多型があることがわかった。
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