本研究では以下の二つの発見に基づき、細胞周期G2/M進行の制御機構とオーキシンの増殖促進作用との関連を探るものである。 (1)G2/M期に特異的に発現が起こる遺伝子のプロモーター領域にはMSAエレメントと名付けた周期依存的転写に必要十分なシス配列が存在することを明らかにしているが、このようなG2/M期遺伝子の多くにMSAエレメントに加え、オーキシン応答性転写に関わるシスエレントAuxREが存在することがわかった。 (2)プロモーター領域に繰り返しMSAエレメントを持つ遺伝子を検索したところ、AuxREに結合する転写因子ARF(auxin response factor)やIAAなどオーキシン応答的転写に関わる因子が同定された。 これらの発見はオーキシンシグナル伝達と、細胞周期G2/M期制御との間の関連を示唆している。本研究は2年計画の課題であるため、本年度の進行分を以下に示す。 プロモーター領域にMSAエレメントが認められたARF遺伝子の転写開始点を決定したところ、MSAエレメントは予想通り、転写開始点の近傍に存在していることがわかった。このARF(ARF9)のプロモーター領域はタバコ培養細胞BY2に導入するとG2/M期に活性の上昇が見られたため、この遺伝子は実際にMSAエレメントによるG2/M期転写制御を受けていることが明らかになった。またシロイヌナズナに存在するARF9によく似た二つのARF遺伝子に関しても同様のことが明らかになった。また細胞周期中の転写産物量の変動を網羅解析するための準備を行った。一方、G2/M期遺伝子のプロモーター領域に存在するAuxREの働きは、AuxRE配列への変異の導入や優勢型IAAタンパク質の発現によりプロモーター活性がどのように影響されるか調べることにより明らかにする予定である。今年度はプラスミド構築等の準備を行った。これらは次年度の解析に使用する予定である。
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