1.PsbPタンパク質の三次元立体構造を1.6Åの分解能まで精密化し、得られた構造に基づいてシアノバクテリアの表在タンパク質との比較を行い、それに関する論文発表を行った。 2.PsbPの立体構造に基づいて、欠失変異、アミノ酸置換変異を持つ組換えPsbPを作成し、それらの機能をin vitroの再構成実験によって解析した。その結果、結晶構造中では安定な構造をとらないN末端の15アミノ酸残基が、PsbPのイオン保持活性に必須であることを明らかにした。また、PsbPの立体構造に特徴的に認められた、塩基性のパッチを形成するアミノ酸残基の一つである160番目のリジンをアラニンに置換した変異体を解析した結果、光化学系IIの反応中心に対する結合能が低下している事が示唆された。従ってPsbPの塩基性パッチが、光化学系IIとの結合に重要である事が示唆された。 3.PsbPの立体構造に基づいて、PsbPドメインタンパク質の立体構造のホモロジーモデリングを試みた。その結果、シアノシアノバクテリアと高等植物で共通して存在するPsbPドメインタンパク質に関しては比較的良い構造モデルが得られ、アミノ酸配列の相同性が低いにもかかわらず立体構造上の類似性が示唆された。 4.RNA干渉法によってPsbPの発現が抑制された形質転換タバコの確立と、その生化学的解析を行った。この形質転換タバコにおける光化学系IIタンパク質の蓄積をウエスタン分析によって解析した結果、PsbPの発現が極端に低下している事を確認する一方で、光化学系IIの反応中心であるD1タンパク質や、PsbPと直接相互作用していることが考えられているPsb0タンパク質の量は、それ程低下していない事を確認した。一方でクロロフィル蛍光の分析結果から、このPsbP欠損タバコは常に光障害を受け易い事が示唆された。
|