1.昨年度の研究からPsbPのイオン保持活性に必須である事が明らかとなっているN末端15アミノ酸残基に関して、今年度は新たにN末端の9から15残基を欠損する組換えPsbPタンパク質を順次、大腸菌で発現させて精製し、その機能をin vitro光化学系II(PSII)再構成実験によって解析した。まず、N末端15残基を欠くPsbPが安定した立体構造を保持していることを、プロテアーゼ処理に対する耐性の比較から確認し、N末端15残基までの欠損がPsbPのタンパク質高次構造に影響を及ぼさない事を明らかにした。次にPSII再構成実験の結果から、N末端の13残基を欠損するとPsbPのイオン保持活性、特にカルシウムイオン保持活性が失われる事を明らかにした。一方で、N末端の9から12残基の欠損ではPsbPのカルシウムイオン保持活性は保たれるが、その塩素イオン保持活性が顕著に失われることを明らかにした。PsbPのPSIIに対する結合に関しては、全てのN末端欠損型PsbPにおいてその結合能が保たれていることを確認した。 2.PsbPの発現をRNAiによって抑えた形質転換タバコの解析を進め、そのPsbP欠損タバコにおいては活性酸素が発生しやすい事、また暗所においてマンガンクラスターが著しく不安定化することを見出した。一方でPsbQ欠損タバコにおいては目立った形質は観察されなかった。従って、高等植物においてはPsbPが生体内で植物の生存に必要不可欠な役割を果たしていることを明確にした。 3.シロイヌナズナのリソースから、PsbPドメインタンパク質群をコードする遺伝子に変異を持つ突然変異植物体の入手を行い、その解析を進めた。
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