研究概要 |
1.昨年度までの解析から、PsbPのN末端10〜14残基の間に光化学系IIの活性化に重要な残基が存在すると考えられていた。そこで引続き、N末端9〜14残基を段階的に欠く組換えPsbPと、塩処理によってPsbPを取り除いた単離光化学系II標品を用いたin vitro PSII活性再構成実験による詳細な解析を行った。その結果,十分量の塩素イオン存在下において、11、13、及び、14残基目のリジン残基の欠損に伴って、活性回復能が段階的に低下することを認めた。13残基を欠損したPsbPは若干の活性回復能を示したが、14残基目のリジン残基を欠くPsbPは、光化学系IIに対する結合能を電気泳動で確認できるものの、活性回復能力を全く示さなかった。PsbPのN末端10-15残基部分は結晶構造中では決まった構造をとらない柔軟な領域である事が判明している。従って、この柔軟なN端構造内に存在する塩基性リジン残基が光化学系IIとの相互作用を介して、水分解酸素発生反応に必要なCa^<2+>の保持に重要な働きをしていることが判明した。なお、野生型PsbPと欠損型PsbPとの競合実験を行ったところ、欠損型PsbPは光化学系IIに対する親和性が大きく低下していた。シアノバクテリアにおいて原核型PsbPはN末端の修飾を介して膜脂質にアンカーされている事が推定されている。本研究の結果は、真核型PsbPにおいてもN末端部分が光化学系IIとの相互作用に重要な役割を持つことを示しており、両者においてN末端配列を介した相互作用の重要性が進化的に保存されている事が明らかとなった。 2.原核型PsbPと真核型PsbPの一構造、及び、推定される立体構造の比較解析から、N-末端側のドメインが分子進化の過程で変化し、各々の機能分化が生じた可能性が示唆された。 3.突然変異体を用いたシロイヌナズナPsbPドメインタンパク質群の機能解析において、少なくとも一部のタンパク質が光合成電子伝達に関わる事を示唆するデータを得た。
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