研究概要 |
レタス芽生えでは、生育用液体培地のpHを6から4に低下させると、根の表皮細胞で垂直であった微小管配列のランダム化が起き、根毛形成が誘導される。平成14年度までの研究で、この微小管配列のランダム化は根毛形成に必須であることを見い出している(Takahashi et al.,2003a)。平成15年度は、微小管配列のランダム化と植物ホルモンであるエチレン・オーキシンとの関係を調べた(Takahashi et al.(2003b)Plant Cell Physiol.44:932-940.)。 pH4でもエチレン阻害剤のAVG(0.1μM)、Ag^+(0.1μM)、あるいはオーキシン阻害剤のPCIB(1μM)を添加すると、微小管配列ランダム化も根毛形成も阻害された。逆に、pH6でもエチレン前駆体ACC(1μM)あるいはオーキシンIAA(0.1μM)添加により、微小管配列ランダム化が誘導され、根毛も形成された。このときの微小管配列ランダム化の速度は、pH6+IAA(0.1μM)の芽生えの方がpH6+ACC(1μM)より早かった。オーキシンとエチレンのいずれが微小管配列ランダム化と根毛形成に必須であるかを調べるため、pH6+ACC(1μM)+PCIB(0.1μM)、あるいはpH6+IAA(0.1μM)+AVG(0.1μM)を行ったが、いずれの場合も、微小管配列ランダム化も根毛形成も阻害されなかった。前者ではPCIBの濃度を100μMにすると阻害効果が見られたが、後者ではAVGの濃度を限界の1μMに上げ、さらにAg^+(0.1μM)を加えても阻害は起きなかった。従って、pH低下による根毛形成時の微小管配列ランダム化の本質的誘導要因はオーキシンであり、エチレンはオーキシンの感受性上昇あるいは局在変化を通して、オーキシンの効果を強めていることがわかった。
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