白色光下で育てたレタス芽生えでは、生育用液体培地のpHを6.0から4.0に低下させると、根の表皮細胞においてそれまで細胞長軸に垂直であった微小管配列のランダム化が起き、根毛形成が誘導される。この、レタス芽生えの低pHによる根毛形成の機構を探るため、平成17年度は、以下の点に関して研究を行った。 (1)微小管配列ランダム化と赤色光・遠赤色光との関係 レタス種子を暗所でpH6.0の液体培地に播種し、24時間後にpH4.0の培地に交換した。光の感受性が最も大きくなる培地交換後3時間目に赤色光、遠赤色光をそれぞれ照射し、抗チューブリン抗体で抗体染色を行った。その結果、細胞長軸に垂直な微小管配列は赤色光照射により崩壊し、ランダム化が誘導されることがわかった。ランダム化に必要な赤色光の光量は、397.2J/m^2以上であった。さらに6.62W/m^2赤色光を照射したときは、照射後9分で垂直な微小管の割合が減少し始めた。これに対して、遠赤色光照射ではランダム化は起こらず、垂直な配列が維持されていた。 (2)ACC合成酵素(ACS)遺伝子およびエチレン受容体遺伝子の発現と、酸性条件、IAA、ACC、光との関係 レタス種子を明所もしくは暗所でpH6.0の液体培地に播種し、24時間後にpH6.0、pH4.0、pH6.0+IAA、pH6+ACCの培地に交換し、引き続き明所もしくは暗所で栽培して30分後のmRNA量をノザンハイブリダイゼーションで調べた。ACS遺伝子のmRNA量は、酸性条件、IAA処理、ACC処理いずれによっても増加するが、それぞれの処理を明所で行ったときの方が暗所で処理したときよりもmRNA量が多かった。これに対してエチレン受容体遺伝子は、これらの処理により特にmRNA量に大きな差が見られることはなかった。
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