研究概要 |
本年度は、これまで単離した突然変異株のうち、葉の細胞数が減少すると共に、細胞サイズが増加する「補償作用」を示すan3変異の詳細な解析と原因遺伝子の単離を行った。その結果、AN3は転写コアクチベーターであるヒトSYTのホモログをコードすること、AN3は転写因子の1種であるAtGRF5と相互作用すること、これら2種の遺伝子の機能欠損および機能獲得型の変異体の解祈から、AN3とAtGRF5はおそらく転写因子複合体として機能し、細胞増殖の正の制御により葉のサイズ決定に関与することを明らかにした。 一方、葉の細胞数が増加した変異株3系統(grandifoiaと命名)を用いた解析も進めた。gra1,gra2変異はそれぞれ、2番染色体、4番染色体の上腕部にマップされた。突然変異株における葉の発生過程を詳細に観察したところ、いずれの変異株でも、葉における細胞増殖期間が延長されることで細胞数が増加することが明らかとなった。また、an3とgra1との2重変異株は、相加的な表現型を示すため、AN3とGRA1は独立の遺伝学的経路を介して葉のサイズ制御に関与することを示した。 葉の細胞サイズの制御については、細胞サイズが小型化する、116系統を用いて、原因遺伝子座のマッピングを進め、その位置を5番染色体上腕部の約130kbの領域内に絞り込んだ。 T-DNA挿入変異株を元にした葉のサイズ異常を示す突然変異株については、T-DNAの挿入と葉の表現型が連鎖する系統が8系統得られてた。そのうち2系統については、PPRドメインタンパク(ATIG80270)およびPHD fingerタンパク(At3911200)をコードする遺伝子のプロモーター領域あるいはエキソンにT-DNAタグが挿入されていることが判明した。
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