硝酸塩に応答したサイトカイニン(CK)生合成に関与するAtIPT3の生理機能を明らかにする目的で挿入変異株、過剰発現株の解析を行った。トランスポゾン挿入変異株は根の伸長促進を示し、AtIPT3のプロモーター及び蛋白コード領域を含むDNAを導入した植物が根の伸長抑制を示したことから、AtIPT3の生理機能の一つが根の伸長抑制であることが示唆された。 CYP735A1およびCYP735A2の過剰発現株において水酸化されたCK分子種の割合が増加したことから、植物体内でこれらの遺伝子産物がCK水酸化酵素として機能することが証明された。二重変異株においては水酸化されたCK分子種が著しく減少したことから、CYP735A1、CYP735A2がシロイヌナズナにおけるCK水酸化を担う主要な酵素であると考えられた。定量的ReaL-time PCR法による遺伝子発現解析を行い、CYP735A1、CYP735A2いずれも硝酸塩やCKの投与により発現が誘導されること、アブシジン酸やオーキシンの投与では発現が抑制されることを明らかにした。プロモーターGUS遺伝子の発現解析により、CYP735A2は主に根維管束、花茎基部、葯、柱頭基部で発現していることを明らかにした。CYP735A1に関しては発現部位の特定が可能な程度の発現量が無かった。また二重変異株は地下部の生育は野生株と同様の生育を示したが、地上部は矮性を示し、花茎数が増加した。この表現型は水酸化型CKの一分子種であるトランスゼアチンの投与により回復したことから、CKの水酸化反応がシュートの正常な分化及び生長に必要であることが示唆された。
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