植物は光エネルギーを利用して光合成を行うが、過剰な光エネルギーは細胞に有害な活性酸素の生成を促すため重大なストレス要因となる。光合成集光装置遺伝子の光の強さに応じた発現制御は光エネルギーの入力段階における光ストレス防御を担うが、その強光応答機構は明らかではない。昨年度に単細胞緑藻のクラミドモナスを用いて強光により非常に迅速に著しく誘導される新奇の集光装置類似遺伝子Lh14を同定し、このmRNAレベルの強光応答に光合成電子伝達系や活性酸素は関与しないことを示した。今年度はこの新奇遺伝子の強光応答についてさらに解析を進め、以下の成果が得られた。 タンパク質レベルの知見を得るため、Lh14タンパク質に特異的な合成ペプチドに対する抗体を作製した。この抗体を用いたウエスタンブロットにより分子量27kDaのタンパク質に相当するメジャーなバンドが強光照射した細胞の葉緑体チラコイド画分から一本検出された。これはLh14の推定アミノ酸配列から予想される性質と一致する。このタンパク質は弱光下で培養した細胞からは検出されず、mRNAと同様に強光により著しく誘導された。これらの結果はLh14タンパク質が葉緑体チラコイド膜における光ストレス防御に関与する可能性を示唆する。この遺伝子の光応答機構についての知見を得るため、mRNAレベルの光応答における光強度と光質の影響を調べた。暗所で培養した細胞を30分光照射すると、1000μmol m^<-2>s^<-1>まで光強度に依存したmRNAの発現が見られた。また、この発現はDCMUとDBMIBにより光合成電子伝達系を完全に阻害しても見られ、青色光に対して強い依存性を示すことより、特異的な青色光受容体の関与が示唆された。
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