研究概要 |
昨年度までの研究により、シロイヌナズナの根の遠赤色光応答遺伝子群が特定された(Sato-Nara et al.2004)。これらの中には、6つのアクアポリン(TIP1;1,TIP1;2,TIP2;1,TIP2;2,PIP1;2,PIP2;3)や感染特異的タンパク質1(pathogenesis-related protein 1;PR1)に類似するタンパク質(FPL)の遺伝子が含まれていた。このうち、TIP2;2及びFPLに着目し、遠赤色光への応答の仕組みを詳細に調べたところ、根の遺伝子発現は、シュートからの輸送されてきたシグナルと根が独自に遠赤色光を受容してできたシグナルの両方によって調節されていることがわかった。また、hy2突然変異体を用いた研究から、根の細胞の遠赤色光受容に、正常なフィトクロムを介したシグナリング以外の因子が関与することが示唆された。これらの根の遺伝子発現調節に関する新知見は、植物体内へ入った遠赤色光の役割を考える上で、非常に興味深く重要であり、根の光応答研究の新分野を切り開くであろう。以上の研究成果は現在投稿準備中である。 また、シロイヌナズナのアクチーベーションタグラインを用いて、光に応答して根毛を形成しやすい突然変異体(PB7-11)を単離し、解析を行った。PB7-11は、野生型(Col)に比べて、白色光または遠赤色光連続照射下で育てた実生の根毛密度が高かった。ゲノム中のT-DNA挿入部位を調べたところ、このPB7-11の変異形質は、新規のmicroRNA遺伝子を過剰発現したために、引き起こされているらしいことがわかった。突然変異体PB7-11を用いた研究は、光による根毛形成誘導の分子メカニズムだけではなく、新規のmicroRNAの発見及び機能の解明につながると期待される。
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