タバコ培養細胞BY-2株を様々な培養培地に移し、増殖速度や細胞内のタンパク質量を測定した結果、ショ糖、窒素、リン酸がない飢餓状態においてタンパク質分解が起きていることがわかった。そこで、透過型電子顕微鏡観察により飢餓状態における形態構造観察を行った結果、二重膜構造の自食作用胞(オートファゴソーム)が観察された。そして、当研究室で解析したタバコ培養細胞BY-2株のEST情報をもとにオートファジーに中心的役割を担うタンパク質(NtApg8)へ蛍光タンパク質(YFP)を融合しBY-2株に発現させ、共焦点レーザー顕微鏡およびデコンボリューション蛍光顕微鏡により詳細に観察を行った。その結果、酵母や動物細胞と形状が似た二重膜構造体を確認し、液胞へ移行していることがわかった。また、抗NtApg8抗体を作製し、免疫電子顕微鏡観察を行った結果、飢餓状態にのみオートファゴソーム様の構造体を確認し、オルガネラの分解へ関与が示唆された。以上の結果から、飢餓条件において細胞内のオルガネラの一部は、オートファジー機構により液胞内で分解されることが推定された。これらの成果は、日本植物生理学会およびアメリカ植物学会にて発表した。また、オートファジー機構以外の分解機構を見出すために、ショ糖、窒素、リン酸がない飢餓状態におけるタバコ培養細胞BY-2株のmRNAを単離し、当研究チームで作製したタバコ培養細胞BY-2株の約9000クローンを貼り付けたマイクロアレイを用いて解析を行った。現在、通常培養細胞の遺伝子プロファイルと比べて極端に発現が多い遺伝子または少ない遺伝子について解析を進めている。
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