タバコ培養細胞BY-2株にチトクロムb5とRFP (Red fluorescent protein)の融合タンパク質を発現させた場合、細胞増殖期にRFPは凝集パターンを呈し、定常状態期に移行すると液胞内にRFPの蛍光が検出された。そこで我々は、RFPの蛍光を指標にタンパク質凝集体の液胞移行および分解機構について解析を行った。RFP凝集体の液胞移行を誘導する条件を検討した結果、RFPの蛍光は栄養飢餓条件で液胞に移行することがわかった。栄養飢餓条件下でプロテアーゼ阻害剤を加え培養した場合、RFP凝集体は液胞移行せずにオートリソソーム(自食作用胞)様の構造体内に観察されることから、RFP凝集体の液胞移行にはオートファジー機構の関与が示唆された。そこで、オートファジーに中心的な働きを担っているAtg8のBY-2ホモログNtAtg8とYFP (Yellow fluorescent protein)の融合タンパク質を発現させて動的解析を行った。その結果、栄養飢餓条件下に移行すると、リング状のオートファゴソームが誘導されることがわかった。そして、オートファゴソームは中央液胞へ直接、または、小さい液胞内に取り込まれてから中央液胞へ移行することが確認された。その上、RFP凝集体は他のオルガネラに比べ、優先的にオートファゴソームにより取り込まれることがわかった。以上の結果から、RFP凝集体は栄養飢餓により誘導されたオートファゴソームにより取り込まれ、液胞へ移行することが推定された。これらの成果は、国内外の学会およびシンポジウムで発表し、細胞生物学の国際雑誌へ論文を投稿中である。
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