琉球列島から台湾にいたる地域より採集したオオジシバリ複合体(キク科)の細胞地理学的解析をおこない、琉球列島に三〜八倍体に至る著しい倍数性が見られること、中琉球には三〜六倍体、南琉球には五〜八倍体が分布し、琉球列島を南下するにつれて高次倍数体が出現するようになること、この倍数性が同属のハマニガナとオオジシバリの異種間交雑に端を発する網状進化の産物であることを明らかにし、これらの成果を取りまとめて論文として報告した(Denda and Yokota 2004)。また、中国大陸産と中琉球産のミタニクラマゴケ(イワヒバ科)に形態的分化が生じていないかどうかを詳細に調べ、ミタニクラマゴケとして報告されていた沖縄島の標本がツルカタヒバを誤認したものであることを確認し、論文として報告した(仲松他2004)。さらに、これまで分類学的取り扱いに混乱が見られた琉球列島産モダマ属(マメ科)について形態と分子情報の比較をおこない、琉球列島にはモダマ(屋久島・奄美大島)とコウシュンモダマ(沖縄島以南)の2種が分布することを報告した(脇田他2004)。両種は独立に琉球列島に侵入したと予想され、現在分子系統学的な解析を進めている。 次年度に向け、リュウキュウコンテリギ(ユキノシタ科)倍数体の起源について、細胞地理学的、分子系統学的解析を進めている。現在までに、四倍体が沖縄本島の少数の産地に散在的に出現すること、四倍体が単系統群であることを確認している。これらの成果は、5月に開催される植物学会九州支部会(沖縄大会)において発表する予定である。
|