日本沿岸の深海に棲む等脚目ミズムシ類の多様性および系統と、水深に代表される生息環境との関係を明らかにすることを目的とし、調査・研究を行った。 調査は広島大学附属練習船豊潮丸南西諸島調査航海(5月18日〜5月29日)と東京大学附属研究船淡青丸深海生物調査航海(11月16日〜11月22日)に参加し、深海性ミズムシ類の採集を行った。また、京都大学瀬戸臨海実験所を拠点とし採集調査および富山市科学文化センターに収蔵されているミズムシ類標本の調査を実施した。さらにこれまでに東京大学附属研究船白鳳丸によって採集されたサンプルのソーティングを行った。 得られた標本の形態形質に基づいて分類学的研究を行った。研究は解剖→プレパラート作成→観察→同定→記載の順で進めた。実体顕微鏡下で附属肢を電解研磨により鋭く尖らせたタングステン針を用いてはずした後、スライドグラス上にガムクロラールで封入し、微分干渉顕微鏡を用いて形態観察を行った。また、走査型電子顕微鏡を用いて微細構造の観察を行った。 その結果、88種を日本海溝、千島・カムチャツカ海溝を中心とした日本周辺海域から確認した。この中には60種の未記載と考えられる種を含んでおり、その一部を学会で発表した(日本動物学会第74回函館大会)。また、和歌山県から得たカイメンより採集したHalacarsantia属の2種を新種として報告した(Shimomura and Ariyama 2004)。これは日本近海からの本属の初めての報告であった。現在、採集ポイントと水深毎に個体数と種数を整理中である。
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