研究概要 |
大腸菌には、その細胞死に関与すると考えられる二つの蛋白質を担うantitoxinとtoxinの遺伝子セットが5種類存在している。申請者は、X線結晶構造解析によって、これらの遺伝子産物複合体の構造学的知見を得ることによって、両蛋白質間の相互作用領域がtoxinの機能にどのように影響しているか、そしてtoxin活性がantitoxinによってどのように中和されるかを研究した。 バクテリアの細胞死に関与すると考えられる二つの蛋白質、MazE(antidote), MazF(toxin)、の複合体の結晶化に成功し1.7Å分解能で立体構造解析した。MazE-MazF複合体は2:4のヘテロヘキサマーを構成している。特徴的なMazEのC末端は、隣に配置するMazFダイマーの一方の分子と密接な相互作用を有している。その結合部位は大きく4つ(Site 1-4)にわけられ、特にSite1では、toxinとantidoteに保存された残基間の相互作用がみられる。また、類似Toxinの構造比較から、Antidoteの結合に際してのみ見られるコンフォメーション変化が明らかになった。これまでに得られた分子生物学知見により、toxinの標的蛋白質の認識とantidoteによる不活性化は、addiction systemに保存された共通な機構であることが示唆された。 YefM(antidote)とYoeB(toxin)も、バクテリアの細胞死に関わるリボヌクレアーゼであることが示唆されている。申請者は、さらにYefM-YoeB複合体の立体構造を決定した。YoeBはバクテリアに共通して見られるリボヌクレアーゼの構造を有しており、YefMは二量体で一分子のYoeBに結合していた。
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